こんにちは、エンチャイルドの広報担当、地球村山歩です。
今回は、山極寿一先生の著作『「サル化」する人間社会』(発行 集英社インターナショナル)を引用しながら、教育支援の意義について考えてみたいと思います。
「人間とは社会的動物です」と述べるのは、山極寿一・京都大学前総長。
山極先生は「人類学」を選択した理由をこう語っています。
「人間の本質を知るには、人間社会の由来を知らなければならないだろう」
「人間の本性を知るには、人間社会がどのようにして生まれ、進化してきたのかを知る必要があると思った…」
山歩は進化論の信奉者ではありませんが、山極先生のお話には共感することが多いのです。
それはきっと、山極先生が人類学を通して「人間の本質」に迫ろうとしているからです。
より良い社会を見いだそうとすれば、人間の本質に迫らなければなりませんし、人間の本性を知らなければならないからです。
山歩もまた、社会的活動を行う中で、社会学的なアプローチであれ、心理学的なアプローチであれ、そして人類学的アプローチであれ、人間の本質、人間の本性を扱わずして、その目的を達成することはできないと考えます。
家族は最小単位の共同体です。社会はその家族が集まって、つながってできた集団ですから、社会もまた家族が拡大した共同体と見ることができるでしょう。その意味で、社会共同体の基本単位は家族だと見ることができます。
山極先生はこのように述べています。
「食べ物を家族で分かち合い、共同体でともに子育てを行うといった行動は、人間の心を進化させ、高い共感能力を芽生えさせました。共感能力とは、自分以外のものの気持ちを理解する力のこと。人間以外にも、ゴリラやサルにも共感能力は見られますが、人間ほどではありません」
「家族共同体」の特徴に、「共食」「共育」「共感」の要素があることが、山極先生のお話からも分かりますね。
エンチャイルドの教育支援活動の特徴を挙げてみましょう。
・活動の中心に子どもがいる
・子どもたちは人類共通の宝物である
・子どもへの教育支援は共育である
・教育支援の目的は子どもたちの成長である
・子どもたちの成長は希望の未来の証しである
・支援者と受益者の関係は、「家族のために」という家族共同体に流れる共感性を根拠としている
・心の国境を超えて体験した家族共同体感覚は、そのまま社会共同体の一員として共同体感覚となる
などなど
山極先生は著作の中でこう述べます。
「人類は子育ての必要性から『家族』を作り、『共同体』を作りました。そして、次第に集団規模を増大させていったのだと考えられます。子どもを一緒に育てようと思う心が、大人に普及していった。それが人類の家族の出発点なのです」
皆さんはどう思われますか?
人類の家族の出発点は子どもを共育することにあり、と。
現代社会にさまざまな問題があると仮定しましょう。
これを解決しようとするとき、山極先生の考えを借りて言えば、
子どもたちの共育を促進させることは、家族共同体の本来の機能を活性化することである。子どもたちの健全育成が回復すれば、共同体としての社会の再建は成され得る。
いかがでしょう?
心の国境を超えた家族愛による子どもたちへの教育支援で、より良い社会の実現を目指すという、私たちの活動とダブりませんか?
人類の家族の出発点が共に子どもを育てるところにあるという仮説に基づいて考えてみましょう。
子どもたちの共育を中心的な活動にすることで、混迷の中にある人類共同体世界を正常化させることができるのではないか、ということなんです。
これこそが人間の本質や本性に帰る運動だとも言えます。
いずれにせよ山歩の言いたいことは、子どもたちへの教育支援には価値があるということであり、共育という考え方が共同体の絆を強く深くする鍵であるということです。
さて現在、エンチャイルド奨学生たちを対象として取り組み進行中の「クリスマス・プロジェクト企画コンテスト」は、ピース・アドボケイト社会教育プログラムの一環として行っているものです。
皆さまの一日100円の支援がより良い社会の実現を可能にすることでしょう。
ぜひご協力ください。
コメント
コメント一覧 (3)
人類学や欲求論、社会学など、さまざまな角度、アプローチから解説されていて説得力のある内容です。
ここ数回の記事から、エンチャイルドは何を目指していてどんなことに取り組んでいるのかが見えてきますね。
エンチャイルドの支援者であることを通じて世界の子どもたちの共育に携わることができ、それはより良い社会づくりにも貢献することにつながっていることはやりがいがあります。
地球村山歩
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地球村山歩
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