こんにちは、エンチャイルドの広報担当、地球村山歩です。

 エンチャイルドblogで新田次郎の『アラスカ物語』を紹介したい理由は二つあります。 

 一つは、面白い小説なのでぜひお勧めしたいという単純な理由。これを読んで新田次郎文学の世界が合うなと思われたかたはぜひ他の作品も読んでみてください。新田作品の中には実在の人物をモデルにかかれた名作(『孤高の人』『栄光の岩壁』『銀嶺の人』『芙蓉の人』『孤愁(サウダーデ)』などなど)がたくさんありますよ。

 二つ目の理由は、海外支援や国際交流を実践している人に大きな刺激とたくさんの示唆を与えてくれる作品だと思うからです。

world_eskimo


 主人公、フランク安田(安田恭輔/1868~1958)は宮城県石巻市出身で10代後半に渡米します。
 アメリカの沿岸警備船ベアー号の乗組員となりますが、ある出来事がきっかけで一人下船し、エスキモー(イヌイット)の住む地(バロー村)で暮らすようになります。バロー村の人々は鯨をはじめとする海獣の生肉を主食として極限の地で生きる人々ですが、白人たちによる鯨の乱獲などの原因で食料難に陥り、さらには疫病(麻疹)によって多くの人々が死に、村は存亡の危機に陥っていきます。
 そこからフランク安田のアラスカ物語が始まります。

510HWK63ZPL._SX328_BO1,204,203,200_
新田次郎『アラスカ物語』


 同小説、フランク安田の生き方から学んだことを、エンチャイルド的視点から3点挙げてみましょう。

(1)フランク安田がエスキモーの人々と良い関係を築けたのは、ひとえに彼の誠実な人格と優れた能力によるものですが、私が注目したのは、フランク安田が生肉を食べられたことです。エスキモーの主食である生肉を食べられたことによってフランク安田とエスキモーたちとの心の距離は一気に近くなります。ちなみにインディアンは生肉を食するエスキモーを忌み嫌います。これは8エレメント流の解釈を加えると、「共食」のエレメントを満たしたことで家族の関係をつくり出すことができたと見ることができます。食は文化です。エスキモーにとって生の中心である食(生肉を食する)を共にできたことは、異文化の壁を超えてフランク安田とエスキモーが一つになるための鍵になったと思います。

 海外支援、国際交流においても異文化を超えて互いを理解し、共に何事かを行い、互いが家族のように生きていこうとすれば、食を共にすること、互いの食に敬意を表することは思いのほか大切なことであるといえます。その国の人々と共に生きていこうとすれば、彼らの食文化を愛することが不可欠なのです。

(2)フランク安田はごく普通の日本人のように見えますが、強靭な精神力の持ち主です。その強い意志力と深い知恵によって大自然の中で次々と遭遇する試練を乗り越えていきます。フランク安田は海を越え、氷原を越え、山を越えていきます。極寒の地には気候の試練が常にやって来ます。そして動植物との関係もまた生きていく上で避けて通ることができません。現代人には想像もできませんが、大自然の中で生きていくということは人間以外の生命と共生・共存していくことだということです。

 海外での活動では、その国の文化や風習、生活習慣への理解だけでなく、その国の気候や風土、生態系とうまく付き合わなければなりません。異国で暮らすということは、人間社会との関わりだけでなく、大自然の影響が受けながら生きていくということなのです。

(3)フランク安田と妻ネビロ(エスキモー)は、存亡の危機に瀕したバロー村の人々ら数百人を荒れ野の800キロもの行程を経て、新天地(ビーバー村を建設)に導きます。これが「ジャパニーズ モーゼ」と呼ばれるゆえん。フランク安田はそこでエスキモーとインディアンと白人が共に暮らせる共同体をつくり上げます。
 フランク安田には異文化を超えて人を動かす力があります。人と人とをつなぐ力があります。エスキモーとインディアンが共に生きる道を開きます。エスキモーとインディアンの男女を結婚にも導きました。
 妻ネビロと共に徹底して他者のために生きたフランク安田でした(これが「アラスカのサンタクロース」と呼ばれたゆえん)。彼の人生に貫かれたその志の強さは海外支援活動を上で不可欠の要素です。何のために生きるか、どのように生きるのか、誰のために生きるのか…。生きることの根本原理に貫かれたフランク安田の生涯でした。

 『アラスカ物語』全体を通して、フランク安田が8エレメント(共生、共食、共育、共立、共助、共有、共感、共観)を満たす実践と行動の伴う生き方をしたのだと分かります。
 
 8エレメントの教科書のような生き方をフランク安田の生涯から学ぶことができます。



ENCHILD


★読者登録お願いします★