こんにちは、エンチャイルドの広報担当、地球村山歩です。

 前回、貧困の5大要因という話題に少し触れました。今回は、エンチャイルドがこの五つの要因を取り除くためにどんなチャレンジをしてきたのか、「欲求論」を用いて簡単に説明しておきたいと思います。

 貧困の5大要因(the factors of poverty 〈as a social problem〉 )とは、下記の図にある5項目です。
 
 *The big five:無知識・無知(ignorance)、病気・疾患(disease)、無関心(apathy)、不正直・不誠実(dishonesty)、依存(dependency) …フィル・バートル教授による


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 この貧困の5大要因を取り除くという課題解決について、なぜ欲求論の観点からアプローチするのでしょう。
 「欲求」は人間の生命活動(生命の維持と成長)に不可欠です。貧困問題もまた、人間の生命活動と密接に関係する内容なので、欲求論を用いて課題解決を図ることは決して意義のないことではないと考えるからです。

 ここでは、アブラハム・マズローの自己実現理論、欲求段階説を参考にします。

 マズローの欲求段階説は5段階で説明されていますが、彼が晩年に発表した6段階目の欲求も加えて話を進めます。

 【マズローの欲求段階説】

マズロー欲求段階説


 1.生理的欲求(呼吸、食事、水、性的欲求、睡眠、恒常性維持、排泄)
 2.安全欲求(身の安全、雇用の安定、資源の安定、道徳性の保証、家族の安全、健康維持、財産の維持)
 3.帰属欲求(友情、家族、愛情、所属、社会的欲求)
 4.承認欲求(自尊心、自信、達成、他人からの尊敬、名声や地位を求める出世欲、親和性)
 5.自己実現欲求(道徳、創造性、自発性、問題解決、偏見の欠如、事実の承諾、夢の実現)
 6.自己超越欲求(コミュニティーの発展、隣人愛、利他、愛他、志を持って生きる)

 1~4は「欠乏欲求」、5~6は「存在欲求(成長欲求)」と分類されます。

 支援の目的は、必要な、求められている欲求を満たすこと、といえるかもしれませんが、一方で、マズローの欲求段階説が示すように、低次の欲求から高次の欲求に向かわせていく、そのための刺激を与えることが支援の真義かもしれません。


 「貧困の5大要因」解決のための支援の話に戻します。

 エンチャイルドの解決のための支援の実践例は以下のとおりです。

 「無知識(無知)」:知識を得るだけが学校の存在理由ではありませんが、学校に通って勉強できる、また学校の教育環境が充実しているということは、「無知識(無知)」の状態を解消する方向に近づけることができると考えます。エンチャイルドは、そのために「奨学金給付プログラム」「学校設備支援」を行ってきました。

 「病気(疾患)」:この問題の解決は極めて重要ですが、直接的な継続的支援活動はまだできていません。2013年11月にフィリピンが巨大台風の被害を受けた際には、エンチャイルドとして経済的支援を通して現地の医療支援を行いましたが、「病気」→「健康維持」というふうに理解すれば、「給食支援」「フィーディングサービス」もまた、「病気」を回避し、除去する課題解決の方法の一つになり得ると考えています。

 実際問題として、空腹であること、栄養を十分に摂取できていない状態は、彼らの生命活動にとってマイナス要因以外の何ものでもないからです。学習意欲を減退させる最大の原因の一つが空腹です。

 まだまだ小さな規模ですが、エンチャイルドはクリスマス時期を中心に給食支援、フィーディングサービスを毎年実施しています。しかしこの取り組みは、根本的な解決をもたらすわけではありません。

 「無関心」「不正直(不誠実)」「依存」:この三つの課題解決は、ブログでも繰り返し紹介している「ピースアドボケイト教育」(「8エレメント」による社会教育プログラム)を通して実践しています。

 経済的支援だけでなく精神的、社会教育的支援を同時に行います。欲求段階説的にいえば、経済的支援は欠乏欲求を満たすための手段ですが、社会教育的支援によって高次の欲求である存在欲求を刺激することで、夢と志に生きる青少年を育成しようというわけです。これによって「無関心」「不正直(不誠実)」「依存」の除去することができると考えています。

 その意味でエンチャイルド・サポーターの皆さまの子どもたちへの応援、継続的なご支援は多大なる貢献と成果をもたらしてくださっています。また、継続したスタディーツアーの実施による支援者の皆さんと支援先の子どもたち、関係者との交流プログラム(スタディーツアー以外の交流プログラムもあり)、現地でのピースアドボケイト教育は、子どもたちに多大なる影響(刺激)を与えています。

 その成果は、エンチャイルド奨学生たちのメッセージをお読みいただくことで確認していただけると思います。「ピースアドボケイト教育」「Give and Give主義」「8エレメント(「自立-共立」論)」は、マズローの理論を借りれば、存在欲求を刺激し、5段階、6段階目の欲求に従って生きる青少年を育成することだといえるかもしれません。

 今回は、「貧困の5大要因」とマズローの「段階欲求説」、そしてエンチャイルドの課題解決のための実践についてお話ししてみました。


<参考>
 自己実現理論(じこじつげんりろん、英: Maslow's hierarchy of needs)とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものである。(ウィキペディアより)


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