こんにちは、エンチャイルドの広報担当、地球村山歩です。

 最近の悩みは、本を読む時間が減ったこと。
 コロナ禍での運動不足解消のために、6月から1日平均1万歩の目標を定めて歩くようにしています。
 これをクリアしようすれば、朝夕2駅分歩き、昼休みにも散歩をしなければなりません。
 2駅が1駅のときもあり、昼に散歩できないこともあるので、土日や祝日には、アベレージを上げるために公園を中心に2時間ほど散策します。最近はお気に入りの散策コースもできてきました。土日は12,000~15,000歩は歩いておきたいところ。
 というわけで、歩きながらの読書はできず、本を読む時間が減ってしまったというわけです。

 電車の中やちょっとした隙間時間を使って週に1冊は読んでいましたが、最近はなかなか進みません。
 そんな中でやっと読み終えたのが、須賀しのぶさんの『革命前夜』。初めて読む須賀作品にピントを合わせるのに最初は苦労しましたが(集中して読む時間が取れなかったのが原因?)、徐々に須賀ワールドに引き込まれ、最後はいつものペースに戻って一気に楽しみました。

ベルリンの壁
ベルリンの壁跡

 大藪春彦賞受賞作。
 帯のコピーを紹介すると、「この国の人間関係は二つしかない。密告するか、しないか―」「革命と音楽が紡ぎだす歴史エンターテイメント」。

 文庫版の裏表紙の説明文も紹介しちゃいましょう。
 「バブル期の日本を離れ、東ドイツに音楽留学したピアニストの眞山。個性溢れる才能たちの中、自分の音を求めてあがく眞山は、ある時、教会で啓示のようなバッハに出会う。演奏者は美貌のオルガン奏者。彼女は国家保安省(シュタージ)の監視対象だった……。冷戦下のドイツを舞台に青年音楽家の成長を描く歴史エンターテイメント。

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『革命前夜』(文春文庫)表紙

 ここからは山歩の感想です。

 「1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊」。これさえ覚えておけば世界史の試験では点数をもらえるでしょう。中高年世代の日本人にとっては、現代史に記憶され続けるであろう主要事件の一つとして理解されている内容ですね。

 『革命前夜』は、6人の若者たちのもがきながらあがきながら生きる日々を通して、「その日」に向かって流れ込む冷戦時代終焉への激流を描き出します。激動の現代史を、あふれる音楽描写によって奏でていると言ってもいいかもしれません。

 東西冷戦の「東西」の意味は、西は「自由な社会」、東は「管理された社会」という印象で理解されています。ある意味、そのとおりでしょう。
 社会主義体制、大きな政府による国家は、良くも悪くも「管理」を軸に回ります。管理社会は監視体制によって維持されます。自由にものを言い、自由に振る舞うことはできません。
 本作は、創作という手法によって監視社会の現実をリアルかつ克明、微細に描き出しています。

 東ドイツの人々は自由を求め、豊かな生活を求めて「壁」の向こうを目指しました。
 「冷戦時代」が終結しておよそ30年(と言っておきましょう)、世界は自由で豊かなグローバル地球社会の実現に向かってきたかに見えます。

 しかし自立心のない自由は本当の自由じゃないよなあと、やはり考えてしまいます。

 支配や管理を必要としない社会を実現できる力が真の自由というものではないか。
 真の自由には必ず自立心という軸が通っている。
 そのような自転軸が集まってこそ、真の平和共存を可能にする共立社会という公転軸をつくり出すことができる―。

 ここ数年、「~ファースト」という言葉をよく耳にするようになりました。
 山歩はこの「ファースト」の意味を、「自分(自国)第一主義」ということではなく、「まず自らの(国家としての)責任を果たそう、自立する者(国家)となろう、そしてお互いのために(世界のために)生きられる自分(国家)になろう」の意味であると考えています。
 「アメリカ・ファースト」も、「世界のためのアメリカになろう」であり、そのためにアメリカは自立心において強くあらねばならないということなのです。

 『革命前夜』を読みながら、国家や社会の成長は人間の成長によってなされるものだと思わされました。人間の心の在り方が社会の在り方を決定するのだということです。

 監視社会も人間の心がつくり出したもの、経済至上主義、拝金主義社会も人間の心がつくり出したもの。専制主義国家、覇権主義も人間の心がつくり出したもの。
 思想というのは、心抜きに生じるものではないからです。

 真に自由な社会をつくろうとするなら、私自身がまず真の自由の獲得者にならなければなりません。
 人の心が成長する社会にしたい、これがエンチャイルドの理念であり、目的であり、存在理由なのです。


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