こんにちは、エンチャイルドの広報担当、地球村山歩です。

 しんかりおんさんの「お母さんのまなざし」に刺激されて、山歩も「おじさんのまなざし」というタイトルで、エッセー風のショートショートを書いてみました(フィクションです)。 

31218701_s

追悼の帰郷宣言

 僕が還暦を迎えた頃、中学、高校で一番の仲良しだったMが、がんで鬼籍に入った。

 60歳は早過ぎる。


 僕とMは中学1年の時に出会った。
 違う小学校の出身だったが、同じクラスになった僕とMはすぐに意気投合した。なぜか分からないが、運命の出会い、というやつかもしれない。

 僕は野球部、Mは吹奏楽部に所属していたが、放課後、時間があれば、互いの家を行き来した。
 Mの家には大きなステレオとたくさんのレコードがあった。ピアノとギター、ギターはアコースティックギターとエレキギターがあった。

 Mはこなれた手つきでエレキギターを操った。

 テケテケテケテケ…♪

 すごいじゃん、僕は息をのんだ。

 Mは、ベンチャーズというバンドの「ダイヤモンドヘッド」そして「パイプライン」の2曲を、部分的に演奏してみせた。
 
 ステレオのラックにもベンチャーズのレコードが並んでいる。

 その日以来、僕は音楽に夢中になった。

 その転換点は間違いなく「テケテケテケ」である。

 Mのギター演奏のシーンが僕の頭の中に録画され、繰り返し再生される。

 中学の頃から、FMラジオのエアチェックに夢中になり、僕は音楽漬けの日々を送るようになった。
 少し年の離れたいとこたちから未知の楽曲をカセットテープに録音してもらった。ちょっと大人になった気分だった。中3の頃にはカセットテープの本数は3桁を超えていた。

 中学2年の時、親に頼み込んでアコースティックギターを買ってもらった。

 ギターは担任の先生に教わった。
 Mは教えてもらう必要がなかった。Mは僕のずっと先に行っていたからだ。


 僕とMは同じ高校に進学した。
 僕は中学時代の膝のけがの後遺症を引きずり、高校での運動部は断念し、美術部に入った。Mは吹奏楽部に入ってトロンボーンを担当した。

 高校2年の時だ。
 吹奏楽部の部長を務めるKとMが中心になって5人組のバンドを結成した。
 僕もMに誘われてメンバーの一人になった。

 Mはリードギター。Kはボーカル、Sはベースギター、Nはドラム、そして僕はサイドギターとボーカルを担当した。

 秋の学園祭でデビューしたものの、間もなく僕らは受験生となり、バンドは再開を約束しないまま休眠に入った。

 僕らはそれぞれの道を進んだ。


 あれから40年以上が過ぎた。5人はそれぞれの人生を生きた。

 いつの間にか僕らは皆、還暦のおやじになっていた。
 
 「そろそろ帰ってこい」

 父はたびたび、そう口にするようになった。
 高齢の両親をこのままにしておくわけにもいかない。

 61歳の誕生日が間近に迫った頃、父が電話口でぼぞっとつぶやいた。

 「M君が病気で亡くなったそうだ」

 「え? いつ? うそ」

 僕はMが闘病生活をしていることを知らなかった。
 Mの誕生日は6月14日。
 40年たっても、その数字が僕の記憶から消えることはなかった。

 Mは61歳の誕生日を迎えられたのだろうか。

 僕は今でもあの頃の曲を聴く。
 バンドでコピーをして演奏した曲たちは、僕にとって失いたくない宝物の一つ一つなのだ。

 Mは僕にとって“音楽の伝道師”だった。
 おやじバンドをやるならMとやりたい。
 そんな思いが心の片隅にずっとあった。

 少子高齢化を絵に描いたように人口減少が進むわが故郷。
 僕が18歳まで過ごした出生地。野山の姿は変わらないが、社会は変わる。

 40年以上の時が過ぎた。
 たまに帰省する場所でしかなかった故郷。
 僕は今そこに戻ろうとしている。
 帰省ではなく、帰郷だ。

 しかしMにそのことを直接伝えることはできない。
 他のメンバーの携帯電話の番号も、メールアドレスも知らない。

 ギターを持って突然訪ねたら、彼らはどう思うだろうか。
 
 「Mの追悼ライブをやらないか」

 そして僕は、「ビートルズやレッドツェッペリン、キッスやチープトリックの曲をMに聴かせてあげようじゃないか」と問いかけたら、彼らはどんな反応を示すだろうか。

 ベンチャーズの「ダイヤモンドヘッド」のギターのリフが聴こえてくる。
 テケテケテケテケと、クールに弾きこなしている中学生のMが脳裏に浮かぶ。

 故郷は僕の心から消えることはなかった。

 人生を一回りした僕は、故郷に戻って人生を締めくくるのだ。

クリスマス・プロジェクト2024 (延長)

 「クリスマス・プロジェクト」は、支援者の皆さまとエンチャイルド奨学生、現地スタッフが共に取り組む、社会課題解決型の奉仕プロジェクトです。
 奨学生たちがチームを編成し、自ら企画したプロジェクトを実施します。チームごとに自主的に社会課題を見いだし、その課題を解決するためのプロジェクトに挑戦します。
 
 プロジェクトは、12月~1月に実施される予定です。2025年2月~3月には、各プロジェクトの成果を共有する報告会をオンライン(公開)で実施いたしますので、ぜひご参加ください!
 
 プロジェクトに必要な予算は日本側で応援します。なお、ご支援の募集期間を12月25日まで延長いたしました。応援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

目標は40万円です
 
「Give and Give~受益者から支援者へ」 
わたしたちはエンチャイルド奨学生たちによる
クリスマス・プロジェクトを応援しています!

ただ今、エンチャイルド・ユースたちが
創り出すプロジェクトのためのご支援募集中!
(期間:2024年9月28日~12月25日)
      
【郵便振替】
口座番号:00180-8-133923
口座名称:NPO法人エンチャイルド

【お問い合わせ】

info@enchild.org

皆さまのご支援なくしてプロジェクトの実現はありません
何卒ご協力のほど、よろしくお願いいたします!

 以下は、2022年のプロジェクトの結果報告の動画です。ぜひご覧になってみてください。









チラシ

スライド2+0727
報告会プレゼン_001
報告会プレゼン_002
報告会プレゼン_003


799654_s

世界の子どもたちを元気にする
プロジェクトを応援してみませんか?

エンチャイルドは
子どもたちのサポーター大募集中です!

国際協力、海外教育支援に
関心のあるかたは、

info@enchild.org まで
お問い合わせください。

ENCHILD

★ ★ ★ ★ ★ ★