こんにちは、エンチャイルドの広報担当、地球村山歩です。
しんかりおんさんの「お母さんのまなざし」に刺激されて、山歩も「おじさんのまなざし」というタイトルで、エッセー風のショートショートを書いてみました(フィクションです)。
追悼の帰郷宣言
僕が還暦を迎えた頃、中学、高校で一番の仲良しだったMが、がんで鬼籍に入った。
60歳は早過ぎる。
僕とMは中学1年の時に出会った。
違う小学校の出身だったが、同じクラスになった僕とMはすぐに意気投合した。なぜか分からないが、運命の出会い、というやつかもしれない。
僕は野球部、Mは吹奏楽部に所属していたが、放課後、時間があれば、互いの家を行き来した。
Mの家には大きなステレオとたくさんのレコードがあった。ピアノとギター、ギターはアコースティックギターとエレキギターがあった。
Mはこなれた手つきでエレキギターを操った。
テケテケテケテケ…♪
すごいじゃん、僕は息をのんだ。
Mは、ベンチャーズというバンドの「ダイヤモンドヘッド」そして「パイプライン」の2曲を、部分的に演奏してみせた。
ステレオのラックにもベンチャーズのレコードが並んでいる。
その日以来、僕は音楽に夢中になった。
その転換点は間違いなく「テケテケテケ」である。
Mのギター演奏のシーンが僕の頭の中に録画され、繰り返し再生される。
Mのギター演奏のシーンが僕の頭の中に録画され、繰り返し再生される。
中学の頃から、FMラジオのエアチェックに夢中になり、僕は音楽漬けの日々を送るようになった。
少し年の離れたいとこたちから未知の楽曲をカセットテープに録音してもらった。ちょっと大人になった気分だった。中3の頃にはカセットテープの本数は3桁を超えていた。
中学2年の時、親に頼み込んでアコースティックギターを買ってもらった。
ギターは担任の先生に教わった。
Mは教えてもらう必要がなかった。Mは僕のずっと先に行っていたからだ。
僕とMは同じ高校に進学した。
僕は中学時代の膝のけがの後遺症を引きずり、高校での運動部は断念し、美術部に入った。Mは吹奏楽部に入ってトロンボーンを担当した。
高校2年の時だ。
吹奏楽部の部長を務めるKとMが中心になって5人組のバンドを結成した。
僕もMに誘われてメンバーの一人になった。
Mはリードギター。Kはボーカル、Sはベースギター、Nはドラム、そして僕はサイドギターとボーカルを担当した。
秋の学園祭でデビューしたものの、間もなく僕らは受験生となり、バンドは再開を約束しないまま休眠に入った。
僕らはそれぞれの道を進んだ。
あれから40年以上が過ぎた。5人はそれぞれの人生を生きた。
いつの間にか僕らは皆、還暦のおやじになっていた。
「そろそろ帰ってこい」
父はたびたび、そう口にするようになった。
高齢の両親をこのままにしておくわけにもいかない。
61歳の誕生日が間近に迫った頃、父が電話口でぼぞっとつぶやいた。
「M君が病気で亡くなったそうだ」
「え? いつ? うそ」
僕はMが闘病生活をしていることを知らなかった。
Mの誕生日は6月14日。
40年たっても、その数字が僕の記憶から消えることはなかった。
Mは61歳の誕生日を迎えられたのだろうか。
僕は今でもあの頃の曲を聴く。
バンドでコピーをして演奏した曲たちは、僕にとって失いたくない宝物の一つ一つなのだ。
Mは僕にとって“音楽の伝道師”だった。
おやじバンドをやるならMとやりたい。
そんな思いが心の片隅にずっとあった。
少子高齢化を絵に描いたように人口減少が進むわが故郷。
僕が18歳まで過ごした出生地。野山の姿は変わらないが、社会は変わる。
40年以上の時が過ぎた。
たまに帰省する場所でしかなかった故郷。
僕は今そこに戻ろうとしている。
帰省ではなく、帰郷だ。
しかしMにそのことを直接伝えることはできない。
他のメンバーの携帯電話の番号も、メールアドレスも知らない。
ギターを持って突然訪ねたら、彼らはどう思うだろうか。
「Mの追悼ライブをやらないか」
そして僕は、「ビートルズやレッドツェッペリン、キッスやチープトリックの曲をMに聴かせてあげようじゃないか」と問いかけたら、彼らはどんな反応を示すだろうか。
ベンチャーズの「ダイヤモンドヘッド」のギターのリフが聴こえてくる。
テケテケテケテケと、クールに弾きこなしている中学生のMが脳裏に浮かぶ。
故郷は僕の心から消えることはなかった。
人生を一回りした僕は、故郷に戻って人生を締めくくるのだ。
「クリスマス・プロジェクト」は、支援者の皆さまとエンチャイルド奨学生、現地スタッフが共に取り組む、社会課題解決型の奉仕プロジェクトです。
奨学生たちがチームを編成し、自ら企画したプロジェクトを実施します。チームごとに自主的に社会課題を見いだし、その課題を解決するためのプロジェクトに挑戦します。
プロジェクトは、12月~1月に実施される予定です。2025年2月~3月には、各プロジェクトの成果を共有する報告会をオンライン(公開)で実施いたしますので、ぜひご参加ください!
プロジェクトに必要な予算は日本側で応援します。なお、ご支援の募集期間を12月25日まで延長いたしました。応援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
奨学生たちがチームを編成し、自ら企画したプロジェクトを実施します。チームごとに自主的に社会課題を見いだし、その課題を解決するためのプロジェクトに挑戦します。
プロジェクトは、12月~1月に実施される予定です。2025年2月~3月には、各プロジェクトの成果を共有する報告会をオンライン(公開)で実施いたしますので、ぜひご参加ください!
プロジェクトに必要な予算は日本側で応援します。なお、ご支援の募集期間を12月25日まで延長いたしました。応援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
目標は40万円です
「Give and Give~受益者から支援者へ」
わたしたちはエンチャイルド奨学生たちによる
クリスマス・プロジェクトを応援しています!
ただ今、エンチャイルド・ユースたちが
創り出すプロジェクトのためのご支援募集中!
(期間:2024年9月28日~12月25日)
創り出すプロジェクトのためのご支援募集中!
(期間:2024年9月28日~12月25日)
【郵便振替】
口座番号:00180-8-133923
口座名称:NPO法人エンチャイルド
【お問い合わせ】
info@enchild.org
皆さまのご支援なくしてプロジェクトの実現はありません
何卒ご協力のほど、よろしくお願いいたします!
以下は、2022年のプロジェクトの結果報告の動画です。ぜひご覧になってみてください。